下北沢な人々 - 下北沢映画祭運営委員会 代表 太田 創-

下北沢な人々 - 下北沢映画祭運営委員会 代表 太田 創-
今回は女優の太宰美緒さんが9月4日(土)、5日(日)に開催される第二回下北沢映画祭の運営委員会 代表の太田 創(おおたはじめ)さんに話を伺いました。


- 下北沢映画祭とはどのようなものなのでしょうか?


下北沢映画祭は大きくわけて2つの趣旨があり、
1つめは埋もれた映像クリエイターを発掘する、という事です。
そしてただ発掘し紹介するだけでなく、その特徴を下北沢の町のイメージに重ねられないかなと考えています。

下北沢という町はちょっと変わっていて、小田急線沿線で唯一中央線(中野・高円寺・荻窪等)沿線と似たごちゃごちゃした雰囲気を持っている町です。けれどもそれらの町とも違った、例えばビレッジバンガードに象徴される独特なカルチャーを下北沢は持っていると思います。子供のおもちゃ箱みたいな町といいますか、ごった煮キラキラモザイク的なイメージといいますか。
そのイメージに沿った映画祭ができたら面白いんじゃないか、という思いがありました。


荒削りでもでもどこか光るモノを持つ作品を幅広いジャンル(様々な方向性)でピックアップし、構成し、先にお話ししたモザイクと言いますか『子供の宝箱』的な雰囲気を出したい、という思いですね。
 そして下北沢映画祭が若い映像クリエイターの目標として、目指してもらえるものになって欲しい。多くの優れた作品が日の目を見ることなく消えていくので、少しでも紹介出来れば。そんな思いを持ってやっています。

2つめに地域と連動して動くということ。
それは下北沢映画祭が単なるコンペティション・イベントの開催だけでなく、一般の方々に対する映像文化の裾野を広げるという役割を担って行ければと思っています。

そのため、ワークショップなどの地域活動や町のいたるところで上映会をおこなうなど、人々に映像を楽しんでもらえる、町全体が映像でつながっているようなものにしていこうと活動しています。来年は下北沢の商店会が主催するイベントとの連動企画や下北沢の地域性を生かした上映会の企画もあります。



- 若い映像クリエイターの方々が目指す映画祭という意味では下北沢映画祭で賞をとったら、地位が確立できるものにしていきたい、ということですかね。



そうです。
いずれはクリエイターの方にとってPFF(ぴあフィルムフェスティバル)やSSFF(ショートショートフィルムフェスティバル)に並ぶコンペティションにします。同時に地域活性のお祭りのようなイベントも目指したい、という思いもあります。映像に興味のない人々に対しても、下北沢映画祭であれば気軽に入れるという敷居の低さも持ち合わせたいと考えてます。



- 『下北沢映画祭』という名前の発端は下北沢という”街"と"映画祭"というキーワードどちらが先に来たものだったんですか?


 下北沢で映画祭をやったら面白いだろう、という意見から始まったもので、”町”と”映画祭”どちらか先というわけでもなく、下北沢が好きな人が集り、両方が自然と重なりあって出来上がっていきました。

 私の場合は小さい頃からよく知っている町だったという事と、美大生だったので映画やアートフィルムに対する蓄積があった事が大きいですね。本業でも一部映画・映像に関わってますし。
うーん、やはりどちらが先という意識は無いですね。





 



-- 下北沢映画祭という名前ですが、妙に町の特徴としっくり来ているように感じます。『下北沢』と『映画祭』のネーミングが町の雰囲気ととてもマッチしていますね。


そうですね、下北沢という町のイメージと映画祭のインディーズ色がリンクして、他の町ではあり得ないくらいイメージしやすいですね。もともと演劇の町、音楽の町といったインディーズカルチャーの下地がありますし、狭いエリアに良い意味での古臭さ、懐かしさと、新しいモノが混在している。そうした魅力があります。
これは下北沢ならではであり、下北沢映画祭の強みだと思ってます。



- 下北沢はどんな街でしょうか?またどんな街になってほしいですか


私にとって下北沢は "愛着のある町" なんです。
私自身が世田谷育ちということもあり、自分の成長とともに下北沢という町を見て来たという認識ですね。

今も昔も変わらず私が持つ下北沢のイメージはモザイクというかおもちゃ箱みたいに色々詰まってる町なんです。そして代官山みたいに洗練されてる訳でも六本木みたいにバブルな感じでもない。若者カルチャーの代名詞の渋谷や原宿とも違う。独特のカルチャーはあるけどちょっとお金の無い感じ(笑
そうした貧乏キラキラ感はこれからも残って欲しいと思っています。

町はいつの時代も変わり成長していくものであるので、下北沢が変わっていくこと、それ自体はいいと思います。ただ下北沢という町は昔も今も多様性をカバーする町であり、下北沢映画祭もまた町と一緒に多様性をカバーするものとして、町の多様性は残って欲しい、そんな風に思っています。



- 第二回を迎える下北沢映画祭ですが、第一回開催時の感触、そして開催前と開催後に抱いた下北沢に対するGAPについて教えて下さい。


街に関するGAPについてはこれまで感じていた印象と大きく変わるものではないんです。
ただ開催した感触としては、第一回はイベントを立ち上げるだけで精一杯だった。
本番と同じ会場で事前イベントを行ったが、全員が素人で全員が手探りで行なうものだったので、開催することで精一杯だった気はしています。



- 去年の募集数はどれ位を予定していたんでしょうか?


100前半の募集数を想定してましたが、蓋を開けたら220を越える応募がありました。
下北沢のブランドと映画祭のイメージがリンクしたことも応募数の増加に繋がったと思います。作品の数やレベルは予想以上に高いものになり、そのことが第二回へ継続して行く上での安心につながりました。また同時に、名前負けしない内容にしなければというプレッシャーも抱える事になりました(笑

その辺を含めて第一回目の映画祭のスタートとしてはいい感触で、課題はあるものの成功だったと認識しています。ただノミネート作品に優等生的な作品が多かったという評価が意外と多く。私自身は『応募作品』が下北沢映画祭のコアだと考えているので、作品の選定システムをもっとより良いものへと変えていきたいと思っています。


  



- なるほど、作品の選び方に映画祭の特徴をつぎ込むということですよね。


 そうです。新人クリエイターを発掘することは映画祭に限らずどこのコンペティションでも趣旨として掲げていることであり、+αの下北沢映画祭ならではのオリジナリティを加える必要があります。それは安易に某かの募集テーマを掲げるといった手法ではなく、(厳しいですけれども)選定する作品内容で個性を出していきたいと考えてます。
そのために『いい作品だけどキレイにまとまってしまった』という作品ではなく、エッジの効いたとんがった作品、ちょっとヤバめな作品、或いは難解だけど高レベルな作品など、クセのある作品を幅広く評価して行きたいと思ってます。最終的にそれが『なんでもアリなおもちゃ箱』的下北沢らしさに繋がっていくと考えています。

 またイベント運営のレベルも上げて行きたいです。
 スタッフの大半は映画祭運営に関して素人ではありますが、イベントの品質そのものを底上げし、第一回目に発生した様々な問題を改善していきたいと思っています。

  



- 下北沢映画祭の一番の魅力はどんなものでしょうか?


何よりコンペの応募作品が面白いです。映像に関わる方であれば絶対に見た方が良いと思います。またゲストでお呼びする監督や招待作品も楽しみにして頂いて良いですよ。
初日の4日(土)には、DVD化されていない"ざわざわ下北沢"が公開されるので、是非遊びに来てください。こちらは世田谷区在住の方でしたら無料でご覧頂けます。
(注:インタビュー時、ゲスト情報は公開されていませんでした。)


- 逆に言ったらどんな人に来て欲しいですか?


やはり地域と密着した映画祭を目指しているので、地元の子供や町の方々にハードルなく、家族連れで来てもらえたらと思っています。そして(キャリア的に)若い映像作家、監督を目指す方々に来て欲しいというのがあります。

金沢に「金沢21世紀美術館と」いう一般の方にも広く開かれた現代美術館があるのですが、美術を専攻してる人でないと知らないような現代美術作家の展覧会に、まるでデパートか遊園地のように家族連れやカップルが普通に訪れているのです。これはちょっと衝撃的な光景です。
下北沢映画祭にもそうなって欲しい、そんな思いがあります。






- 私の場合、女優という職業柄身近に感じることが多いのですが、確かに映画祭と聞くと、多くの人にとっては自分には無縁のことだだと思ってしまうんですよね?

 そうですね、そのため映像文化の裾野を広げ、インディーズの映画・映像もけっして小難しい・取っつきにくいものではないということを広めて、色々な方に興味を持って頂けるようなものにしたいです。




- だから今回の下北沢映画祭においても多様性を持たせて、様々なジャンルの映像を扱っているのですね。


そうです。アニメーションと実写を同じレイヤーで評価してるのもその一環です。
様々な方々に下北沢映画祭にお越し頂き、映像に興味を持って頂くとともに下北沢の多様性にも興味を持って頂く、そんな映画祭にして行きたいですね。





- このインタビューを見て下さっている方々にメッセージをお願いします。


今年、第二回を迎える下北沢映画祭。
下北沢が大好きで、下北沢に還元して行こうという人々がスタッフになっている本映画祭。
どのプログラムも非常にリーズナブルな料金設定になっております。
間違いなく楽しめる内容なので『ぜひっ』遊びに来て下さい。
みなさまのご来場をお待ちしております。


 







- 太宰美緒インタビューア後記 -


太田さんは下北沢映画祭でお世話になっていたので、インタビューはなんだか恥ずかしかったけど、
とても楽しかったです。

太田さんがどれだけ映画が好きかそして下北沢映画祭に敬意を払っているか、とてもよく分かりました。


下北沢映画祭を通じて太田さんをはじめ熱い想いを持った方々に
逢えたことにインタビューをしながら改めて感謝したのであります。

太田さん、ありがとうございました。